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株の配当金でセミリタイア生活がしたいのです…

DCF法による理論株価の計算

 

私が普段株を買うときは主に配当利回りを見て判断することが多く、「企業価値」や「理論株価」といった類のものを使ったことはありません。

ただ、DCF法(Discounted Cash Flow 法)という(有名な?)手法による企業価値の計算方法は、調べてみると結構理に適っていて面白かったので、ここで紹介したいと思います。

そんなの知ってるよという人は読まなくていい内容です。

 

この記事の最後のほうでは、具体的な企業の理論株価の計算もやってみます。

 

 

DCF法(Discounted Cash Flow 法)

DCF法では、会社が将来生み出す全てのフリーキャッシュフロー(FCF)を、一定の割引率で割り引いた現在価値をもってその会社の価値とする手法です。

 

FCFは研究開発に投資したり、配当として株主に還元したりと会社が自由に使うことができるお金です。

したがって、企業価値の計算に純利益よりもFCFを使うのは理に適っていると言えます。(純利益には現金のやり取りがないものまで含まれています)

ただFCFの予測自体が困難なので、理論株価を算出できたとしても参考程度にしかなりませんが…

 

DCF法で企業価値を計算するには、将来のFCFと割引率を求める必要があります。

将来のFCFを予測するのはかなり難しいのですが、仮にFCFが未来永劫一定だとした場合は、以下の式で簡単に企業価値を計算できます。

 

企業価値 = FCF/割引率

 

この式は無限等比級数の和の公式から導出できます。

詳しくは「現在価値」でググってみてください。

 

またFCFが一定の割合で成長すると仮定したときは、

 

企業価値 = FCF/(割引率 - FCF成長率)

 

となります。

 

 

FCFの予測は通常困難なので置いておいて、割引率の算出について説明します。

割引率にはその会社の期待収益率を用いるべきですが、期待収益率は簡単に分かるものではありません。

そこでDCF法では、その会社の「資本コスト」を用います。

 

資本コストとは資金の調達コストのことです。

会社の資金調達は、借金をするか株を発行するかの2種類です。

借金をするときの「負債コスト」と、株を発行するときの「株主資本コスト」の2つを加重平均することで、その会社の資本コストを算出します。

これをWACC(Weighted Average Cost of Capital)と言います。

 

会社には資本コスト以上の収益率が期待されるので、割引率に資本コストを用いるのは妥当と言えます。

 

資本コストの内、負債コストは社債や借入金の金利なので比較的分かりやすいです。

 

一方、株主資本には金利のようなものはありません。

配当利回りが一見株主資本コストのように思えますが、配当を出すかどうかは会社の判断に委ねられています。

世の中には無配の会社はたくさん存在します。

 

そこで、株主資本コストの算出には一般的にCAPM(Capital Asset Pricing Model)という理論が用いられます。

 

まず、国債のような無リスク資産の利回りをd、株式市場全体の配当も含めたトータルリターンをeとします。

この場合、株式のリスクプレミアムはe - dとなります。

また、株式市場全体に対するその会社の株価の感応度をβとすると、株主資本コストは、

 

株主資本コスト = (e - d)×β + d

 

と計算されます。

 

βが1のときは、株主資本コストは株式市場全体のトータルリターンに一致し、βが1より大きいときはコストが増加(リスクが増加)し、βが1より小さいときはコストが減少(リスクが減少)します。

また、βが0になっても(そんなことはあり得ませんが)、株主資本コストが無リスク資産の利回りを下回ることはありません。

 

株主資本には金利がない(配当の支払い義務がない)ので、一見コストが掛からないように思えますが、もしそうなら資金調達で負債を選ぶ理由がありません。

だって株を刷ればノーコストで資金が手に入るのですから。

 

しかし、実際は株主資本にも「隠れたコスト」があり、それは株主が要求するリターンです。

「株主の要求」というコストを支払わなければ、株価はリターンが見込める価格まで下落するだけです。

 

したがって、株主資本コストは常に負債コストよりも高いのです。

実際、ハイリスクな事業に対して銀行はお金を貸してくれません。

こういうときは株を発行して資金を調達します。

会社がコストの高い株を発行し、投資家がそれを買うのは、リスクが高くてもそれに見合うリターンが得られると考えているからです。

 

 

話が長くなりましたが、負債コストと株主資本コストが分かれば、あとはこれらを以下のように加重平均するだけでです。

 

資本コスト = {負債総額 × 負債コスト × (1 - 実効税率) + 株式時価総額 × 株主資本コスト} / (負債総額 + 株式時価総額)

 

実効税率が出てくるのは、借金の利払いは費用に計上できるので、その分税金を節約できるからです。

 

これで割引率である資本コストが算出できたので、DCF法で企業価値が算出できます。

ただ、算出された企業価値の内、株主のものと考えられるのはここから負債総額を引いたものになります。

これを発行済み株式数で割れば、理論株価が算出されます。

 

 

IBM理論株価

では、具体的な例として、International Business Machines(IBM)の理論株価を計算してみましょう。

最初に断っておきますが、かなり大雑把な計算をするので参考にしないでください。

 

IBMはここ数年安定して約$12Bのフリーキャッシュフロー(FCF)を生み出しています。

 

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ここでは簡単に、IBMが未来永劫2016年度のFCFを生み出し続けると仮定します。(FCF成長率は0%)

2016年度のIBMのFCFは$12.808Bです。

 

負債コストですが、ここでも大雑把に米国債10年の2.2%としましょう。

また実効税率は30%とします。

 

また、株式市場全体のトータルリターンも大雑把に7%とし、IBMのβ値である0.93(yahoo financeより)を用いると、株主資本コストは、

 

株主資本コスト = (7 - 2.2) × 0.93 + 2.2 =  6.664%

 

IBMの負債総額は2016年末で$99.224B、株式時価総額は$133.30B(株価$143.04)なので、資本コストは、

 

資本コスト = {99.224B × 2.2% × (1 - 30%) + 133.30B × 6.664%} / (99.224B + 133.30B) = 4.46%

 

したがってIBM企業価値は、

 

企業価値 = 12.808B / 4.46% = $286.94B

 

発行済み株式数は133.30B / 143.04 = 0.9319Bなので、IBM理論株価は、

 

理論株価 = (286.94B - 99.224B(負債総額) ) / 0.9319B = $201.43

 

 

…あれ、思ったより高いですね。

ということは今の株価は売られ過ぎということでしょうか。

まあこの計算は前提が適当すぎるので、当てにならないと思いますが。

 

もし計算が間違っていたら誰か教えてください。

 

 

おわりに

DCF法による理論株価の計算方法の紹介でしたが、今後私が株を買うときにDCF法を使うかと言えば微妙ですかね…

やっぱり前提条件の置き方で大きく変わってきますし、あまりあてにならないんじゃないかと。

 

とは言いつつも、すでにエクセルで簡単に理論株価を計算できるシートを作ってしまったので、今後は嫌でも見てしまうことになりそうです。